舞台『メサイア-鋼ノ章-』(前編)
このブログでは、舞台『メサイア -鋼ノ章-』についてまとめています。ネタバレ含みますので、ご注意下さい。
長くなりますので、お時間がある時にどうぞ。
時系列では、メサイア 【章シリーズ】7番目のお話になります。
舞台『メサイア-鋼ノ章-』(前編)
introduction
軍事協定ワールド・リフォーミングにより、世界中が大幅な軍縮と兵器の開発禁止に調印。世界から戦争が消えた。
しかし、有史以来争いを続けてきた人間が、戦争を捨てる事はなかった。
戦争は今も続いている、スパイによる諜報戦争に形を変えて……
諜報機関を持たない日本では、それらの勢力に対峙するための組織が急ピッチで創設された。
国家最高機密、日本・警察省警備局特別公安五係:通称「サクラ」。
サクラは国籍や戸籍、過去の経歴も抹消され、特別殺人権が与えられる。
生きた証を残す事も許されず、この国から消された存在である。
いつか桜のごとく散るその日まで 、闇に潜みこの国に潜む闇を抹殺する。
サクラを育成、教育する特殊機関
通称 チャーチ
その鉄の掟である
「チャーチ」の絶対規律
1.生徒(サクラ)は、「チャーチ」について沈黙を守らなければならない。
2.生徒(サクラ)は、「チャーチ」を出れば二度と接触してはならない。
3.生徒(サクラ)は、任務に失敗した生徒(サクラ)を救助してはならない。
4.生徒(サクラ)は、友人や恋人になってはいけない。
ただ一人、例外を除いて。
それが、「メサイア」。
舞台『メサイア-鋼ノ章-』ストーリー
鋭利と珀が卒業したチャーチでは、白崎 護と悠里淮斗、間宮星廉と有賀 涼がそれぞれサクラとしての訓練に励んでいた。
息のあった白崎と悠里に比べ、間宮と有賀はメサイアとして上手くいっていなかった。歩み寄ろうとする間宮に対し、メサイアとして必要最低限の事をしてくれればいいとドライな態度の有賀。
そんな中、クアンタムキャットというテロ組織が国内に入り込み、原子物理学の専門家である窪寺啓次に接触しようとしている情報が飛び込んでくる。窪寺は原子物理学の専門家で、その技術をテロ組織に売ろうとしていた。
警備局次長の志倉から四係は窪寺の確保、サクラには窪寺の暗殺命令が出る。
今回の任務は特殊案件につき、五係のサクラにおいては神北係長代理に代わって志倉が指揮をとっていた。
有賀がターゲットの狙撃にのぞむが、暗殺には失敗。
確保の指令を受けていた四係が、国家反逆罪により窪寺を逮捕、拘束する。
その頃、チャーチ内に侵入者が現れる。 おじさんの遺言で、暗号を解読しチャーチに辿り着いた加々美いつきが、志倉への接触に成功していた。
加々美と対峙する志倉の元へ評議会のトップの息子、堤 嶺二が殺された一方が入る。
堤 嶺二は複数の罪状で収監中だったが、政治的な取引で釈放され、人里離れた山荘に移送済みだった。
志倉は四係の三栖に、周がクアンタムキャットの構成員とともに堤 嶺二の殺害現場にいたという情報を託す。
周は自分の本当の父親である堤 貴也を追って公安四係を抜け、クアンタムキャットに接触していた。
四係は拘束した窪寺への尋問で、クアンタムキャットの目的を知る。
クアンタムキャットは、ワールド・リフォーミング締結以前に作られていた核を持ち込み、日本で爆発させようとしていた。窪寺からの提案で全面免責を条件に、日本に持ち込まれた核兵器の所在を教えるという取引に応じる。
日本に持ち込まれたトランクケース核爆弾は全部で10発。全てが同じ建物内に持ち込まれていた。
核爆弾が持ち込まれた建物内に、四係より先に突入し5分以内に核爆弾の回収を完了させるという指令がサクラに出る。
任務に挑む白崎と悠里だったか異変に気づく。その場でケースを調べるが核爆弾は入っておらず、ケースに仕掛けられていた時限爆弾作動により白崎が負傷。
こちらの動きが分かっていて罠が仕掛けられている事から、内部から情報が漏れている事に気付く。
白崎の手術は成功するが、悠里は白崎を傷つけた裏切り者への復讐心に囚われる。得意のハッキングで堤 嶺二殺害現場の監視カメラの映像入手に成功。
そこに映っていたのは……ショートヘアと名乗る、有賀だった。
過去に、第三の闇という暗殺組織に所属していた背景も手伝い、有賀はクアンタムキャットのスパイとして拘束される。尋問を受けるが自分は何も知らないという態度を貫く。
そして、ついに爆破テロが発生。球場での核爆弾爆発により、公安四係に拘束されていた窪寺が、政府の命令で釈放され、放射能除去ミッションの陣頭指揮にあたる事になった。
窪寺は、放射能除去装置を開発しており、東海地方で実験・研究が行われていた。そのため装置の配備・始動も迅速に行う事ができ、偶然にも今回のテロを最小限に抑える事ができた。
三栖はあまりにもタイミングよく重なる偶然に、クアンタムキャットと窪寺が初めから繋がっていた事を察する。
悠里は、有賀が映った監視カメラの映像を改めて確認し、誰かが手を加えた跡を発見。自分が冷静じゃなかった事を反省し、有賀の様子を確認しに行く。そこで、有賀の過去の話を聞く。
有賀はワールド・リフォーミングの調印式に暗殺者として潜り込み、組織の命令で間宮を暗殺しようとしていた。しかし、間宮の平和への願いを込めた全身全霊の演奏を前に、引き金を引く事が出来なかった。
その時、別の組織によるテロが起こり、会場にいた間宮の両親を含む、多くの人が死んだ。人を殺す事に疲れ果てていた有賀は、間宮の演奏に救われた。その後、有賀は父親を殺し組織を抜けたのだった。
今回の爆破テロにより、暗殺はやりすぎだと思っていた白崎は、それが甘い考えだと思い知る。
志倉から、白崎と悠里に窪寺の拘束命令が下る。窪寺の生死は問わないという命令に、今度は素直に応じる。
窪寺の拘束に向かった白崎と悠里は、四係の三栖と遭遇し交戦になる。三栖には窪寺を守れという指令が出ていた。
今、窪寺を殺したら放射能汚染を止める事は出来ないという三栖に対し、窪寺の放射能除去技術があるのをいい事に、また核が使われる。窪寺が死なない限り日本はずっと核の脅威にさらされ続ける事になると説く白崎。
自分の信じる正義を貫く白崎との本気の殴り合いの中、三栖は“本来の自分”に気づかされ白崎を逃す。
窪寺の拘束は失敗。
更に移送手続き中の有賀が、クアンタムキャットの工作員に奪還される事態に。
チャーチ内で待機していた間宮に有賀を追えと命令が下る。サポートとして既にチャーチを卒業し、一人前のサクラとして活動している五条が紹介される。
有賀は、クアンタムキャットのスパイとして誤解されたまま死んでもらうため、チャーチから奪還されたのだった。しかし、不測の事態に備えて有賀の体には発信機が埋め込まれていた。
発信機を辿り有賀を追う五条と間宮。
核爆弾を奪って逃げようとする有賀と、クアンタムキャットの工作員・ペルシャの交戦中に間宮が駆けつける。
ほっとする有賀だったが、間宮に銃口を向けられる。そこで、自分がクアンタムキャットのスパイであり、コードネーム:ショートヘアだと明かす間宮。
茫然自失の有賀は、間宮の銃弾に倒れるのだった。
周は、クアンタムキャットのバックには戦争をやめたく無い勢力がついており、中には政府の人間もいるという情報を匿名で三栖に送る。
三栖からの情報と頼みにより、志倉は総理大臣に首謀者の拘束・関係各社の罷免を要求。政府内のパワーバランスを盾に窪寺を拘束するのだった。
核を持って海外へ逃亡する間宮の前に、立ちはだかる有賀。ワールド・リフォーミング調印式の日に出会っていた二人は、チャーチで再び出会い後戻りできないほどすれ違ってしまっていた。
撃ち合いの末に倒れる間宮。
最後の力を振り絞り、ヴァイオリンを弾く。曲目はワールド・リフォーミング調印式で引いていた“G線上のアリア”。それはまるで、あの日の出来事を再現するかのようだった。
そして、有賀に「お願いだ。君が俺を殺してくれ」と頼む間宮。
クアンタムキャットのスパイではなく、間宮は最後まで自分のメサイアであった事を刻みつけるように、チャーチの絶対規律・鉄の掟を復唱し、間宮に銃を放つ有賀。
再び間宮によって生まれ変わった有賀は、新たな覚悟と決意を誓うのだった。
再軍備を画策した政府内の黒幕たちは全員逮捕された。
サクラの活躍を志倉と共に観察していた加々美は、サクラになる事を決意。しかし、自分にメサイアは必要ないと言い放つ。
三栖が手引きして脱獄した窪寺は、白崎により射殺される。
周が追っていた堤 貴也は、クアンタムキャットを捨て北方連合に亡命している事が判明するのだった。
『メサイア-鋼ノ章-』用語解説
ここからは、舞台『メサイア -鋼ノ章-』をより楽しむために、舞台中で使用されている用語について1つ1つ丁寧に解説していきます。
先にアップしてある記事と重複している部分もありますが、シリーズの進行具合に合わせて加筆修正しています。
軍事協定「ワールド・リフォーミング」
世界各国が大幅な軍縮と兵器の開発禁止に調印した軍事条約。期限は10年。 再調印の是非を問う世界会議が開催を控えている。
チャーチ
"サクラ"を育成する機密学校。チャーチではサクラ候補生として2人1組のペアを組み実践さながらのミッションに挑みながら、あらゆる技術と知識を身につける。
メサイア
メサイアとは誰からも救われることのない存在であるサクラを唯一救う事を許された存在。サクラが任務に失敗したからといって国はサクラを助けない。他のサクラも救出には向かわない。任務の失敗は死を意味する。
「任務に失敗した時は、どんな事があっても互いを救う」。
この約束を取り交わした相手を絶望的な状況から救い出してくれる「救世主」になぞらえ、 "メサイア "と呼ぶ。
互いにとって己の助けとなるメサイアの存在は、底なしの闇と死の恐怖に立ち向かいながら、生き抜くための理由であり心の拠り所でもある。
※チャーチに入学すると、強制的にメサイアとして2人1組のペアを組まされ寝食を共にする事になる。相手は選べない。
特別公安五係
警察省の下部組織である警備局が設立した諜報機関。国家最高機密のスパイ組織。
サクラ
国家最高機密のスパイ組織。警察省警備局特別公安五係(公安五係)に所属する、特別殺人権が与えられたスパイたちの通称。サクラは国籍や戸籍、過去の経歴も抹消されこの国から消された存在。仮に任務中に死亡しても一切の証拠を残してはならない。
通常、任務に失敗したサクラを国家が助ける事はない。サクラの如く散る、その日まで、任務をまっとうするという刹那的な生き様を、桜の花の散りゆく姿に例えて〝サクラ〟と呼ばれている。
公安四係
評議会と呼ばれるテロ組織や、北方連合の工作員からこの国を守るため、重要案件の捜査にあたる警察組織。中でも四係は最重要案件の捜査にあたる部署。四係内でも、公安五係(サクラ)の存在を知る者はほとんどいない。
北方連合
ユーラシア大陸の東側のほぼ全ての国家が参加する超大国。軍備推奨派の急先鋒。世界最後の独裁国家と呼ばれている。整形技術が発達していて、機関員たちも顔を変えることに抵抗が少ない。
評議会
反政府革命組織のテロリスト集団。軍縮による国力の低下を憂い、強い日本を取り戻す事が目的。しかし、内部分裂が表面化。北方連合と同盟関係だったが、堤 貴也の裏切りにより崩壊。
クアンタムキャット
ワールド・ リフォーミング調印式後に、この国のかりそめの平和を暴き、理想の社会に作り変えるため、堤 貴也によって作られたテロ組織。日本を核の炎で焼き尽くそうとしている。
シュレーディンガーの猫
1935年に物理学者のエルヴィン・シュレーディンガーが提唱した、量子力学におけるパラドックス。
『メサイア-翡翠ノ章-』重要人物解説
間宮星廉(まみや・せいれん)
メサイア:有賀 涼
元ヴァイオリニストで、耳が非常に良い。ワールド・リフォーミング調印式で式典奏者としてヴァイオリンを演奏。その時、テロに巻き込まれ両親を失う。テロリストの首謀者は堤 貴也、実行犯は堤 嶺二だった。
有賀 涼(ありが・りょう)
メサイア:間宮星廉
元暗殺組織・第三の闇に所属。間宮星廉の暗殺目的で、ワールド・リフォーミングの調印式に潜り込んでいた。機械のように命令に従い、人を殺すことに疲れ果てていた有賀は、間宮の奏でる音楽に救われる。その後、自らの手で組織を壊滅し、一嶋にスカウトされチャーチに入学。馴れ合いを好まない性格。
白崎 護(しらさき・まもる)
メサイア:悠里淮斗
元公安四係のエース。幼い頃に家族を亡くし、孤児院で育つ。そこで悠里淮斗と出会い親友に。引きこもりの淮斗の面倒を見ながら、公安の激務をこなしていたが、要人警護の任務で刑務官殺しの容疑をかけられてしまう。神北にスカウトされチャーチに入学。正義感が強い。
悠里淮斗(ゆうり・かいと)
メサイア:白崎 護
“フリューリング”として活動していた、凄腕ハッカー。白崎 護とは孤児院で出会い親友に。弟の事故死により引きこもりに。護を助けたい一心で、自らの殻を破り現実と向き合う。神北にスカウトされ護と共にチャーチへ入学。弱者に寄り添う事ができる優しい性格。
加々美いつき(かがみ・いつき)
叔父の遺言の暗号解読によりチャーチに辿り着く。そこで志倉と接触し五係の活動に興味を持ち、サクラになる事を決意。火薬の匂いを嗅ぎ分けられるほど鼻が効く。協調性がない。
五条颯真(ごじょう・そうま)
メサイア:司馬柊介
元体育教師。子どもが好きで児童院の職員に転職するが、勤めていた児童院が北の諜報員による組織だった事から陰謀に巻き込まれ警察に連行される。取調べの最中に一嶋のスカウトを受けチャーチに入学。情に厚く、兄貴肌で明朗快活な性格。チャーチ卒業後、サクラとして活動していたが、志倉によりチャーチに呼び戻された。
高野優太(たかの・ゆうた)
公安四係。三栖と周の上司であり白崎 護の元同僚。白崎が刑務官殺しの容疑をかけられ時に、三栖と周に依頼し脱走を手伝う。
三栖公俊(みす・きみとし)
元評議会の幹部。貧しい家に育ち、幼い頃に母親が一家心中を図るが一人生き残る。組織から排除されそうになった周をかばい、評議会を裏切り周と組織を抜ける。個人での活動に限界を感じていた時、公安にスカウトされ四係に配属される。周がいなくなった後、己の信念に従くべく警察省の志倉と接触し、一時期チャーチで珀の卒業ミッションのサポートをしていた。究極の平等を目指す。
周 康哉(あまね・やすちか)
裕福な家庭に生まれ、次期当主として厳しく育てられる中、父親を憎むようになる。父親への反発で家を飛び出し評議会へ。評議会を裏切る可能性が高い人物としてマークされ、組織の中で処分が検討される。
お互いにメリットがある事から三栖と行動を共にしていたが、徐々に信頼関係が生まれ三栖と共に評議会を抜けた。三栖についていく形で公安四係に配属になるが本当の父親である堤 貴也に復讐するため四係を抜け、クアンタムキャットへ接触する。
志倉一仁(しくら・かずひと)
警察省警備局次長。我妻とは元同僚。情に流されず、完璧な正義を目指す。初めはチャーチ解体を検討していたが、鋭利と珀の卒業ミッションを見守る事でメサイアの意義を理解し、今ではサクラの可能性を信じている。
堤 嶺二(つつみ・れいじ)
元評議会のメンバーで堤 貴也の息子。周 康哉の腹違いの兄。サヴァン症候群であり、世界中に溢れている情報を数字に置き換えて正確な答えを導き出せる。複数の罪状で収監中だったが、政治的な取引で釈放されて人里離れた山荘に移送済み。自分がもうすぐ死ぬ事を察知していた。
堤 貴也(つつみ・たかや)
元評議会のトップ。「ユニフィケーションワールド」という理想を掲げ、世界を一つにする革命を起こそうとしている。評議会を捨て、テロ組織クアンタムキャットを組織する。
窪寺啓次(くぼでら・けいじ)
原子物理学の専門家。日本を捨てクアンタムキャットに協力しようとしていた。放射能除去装置を開発し、東海地方で実験・研究を行う。
舞台『メサイア-鋼ノ章-』後編へ続きます。
舞台『メサイア-鋼ノ章-』公演概要
公演日
東京公演:2015年9月2日〜13日
場所:シアターGロッソ
神戸公演:2015年9月19日〜21日
場所:新神戸オリエンタル劇場
原案:高殿円
脚本:毛利亘宏(少年社中)
演出:西森英行(Innocent Sphere)
殺陣:六本木康弘
製作:CLIE
舞台『メサイア-鋼ノ章-』DVD
【初回特典メイキング】DVDあり:特典映像40分