舞台『メサイア-翡翠ノ章-』(前編)
このブログでは、舞台『メサイア -翡翠ノ章-』についてまとめています。ネタバレ含みますので、ご注意下さい。
長くなりますので、お時間がある時にどうぞ。
時系列では、メサイア 章シリーズ6番目のお話になります。
大まかな内容と、注目ポイントは以下です。
舞台『メサイア-翡翠ノ章-』(前編)
introduction
軍事協定ワールド・リフォーミングにより、世界中が大幅な軍縮と兵器の開発禁止に調印。世界から戦争が消えた。
しかし、有史以来争いを続けてきた人間が、戦争を捨てる事はなかった。
戦争は今も続いているスパイによる情報戦争に形を変えて……
諜報機関を持たない日本では、それらの勢力に対峙するための組織が急ピッチで創設された。
国家最高機密、日本・警察省警備局特別公安五係:通称「サクラ」。
サクラは国籍や戸籍、過去の経歴も抹消され、特別殺人権が与えられる。
生きた証を残す事も許されず、この国から消された存在である。
いつか桜のごとく散るその日まで 、闇に潜みこの国に潜む闇を抹殺する。
サクラを育成、教育する特殊機関
通称 チャーチ
その鉄の掟である
「チャーチ」の絶対規律
1.生徒(サクラ)は、「チャーチ」について沈黙を守らなければならない。
2.生徒(サクラ)は、「チャーチ」を出れば二度と接触してはならない。
3.生徒(サクラ)は、任務に失敗した生徒(サクラ)を救助してはならない。
4.生徒(サクラ)は、友人や恋人になってはならない。
ただ一人、例外を除いて。
それが、「メサイア」。
舞台『メサイア-翡翠ノ章-』ストーリー
ついに、鋭利と珀の卒業ミッションが決定する。
卒業ミッションは全部で3つのミッションを行い、第1、第2のミッションだけは仲間のサポートが許されていた。
第1のミッションは、「指定されたビルに潜入し、機密情報を盗み出す事」。
鋭利は、悠里と間宮を連れて援護に回っていた。
白崎と有賀を連れて潜入に向かった珀は、任務が順調に進みビルからの脱出準備の事で鋭利に連絡するが、様子がおかしい事に気づく。
その時、珀の目の前に北方連合の工作員、芹沢が現れる。
芹沢の本名は、御津見 琮(みつみ・そう)。
行方不明の珀の実の兄だった。
そして、珀のメサイア2人を殺害し、チャーチからの卒業を阻止していたのも芹沢の仕業だった事が判明。自分が珀を迎えにくるまで、サクラとして任務につかせない事が狙いだった。
珀は芹沢の姿を見て、「相棒が必ず死ぬ男」という自分のジンクスが頭をよぎる。
鋭利の身に何か起きたのでは……
不吉な予感に襲われる珀の元に、慌てた様子の仲間が駆けつける。
仲間が集まって来た事で芹沢は立ち去った。
珀は、鋭利が任務中にビルの屋上から足を滑らせて落下し、死亡したと報告を受ける。
鋭利の死は事故や他殺の可能性は低く、不慮の事故として処理される事になった。
鋭利の葬儀が終わっても、その死に不信感を募らせる珀。
不慮の事故という事にも納得がいかない。
これでまた留年が決定かと思っていた珀に、神北から卒業ミッション続行の指令が下る。
通常、チャーチはメサイアがいなければ卒業できない。
そこで、珀にはメサイアではないが、卒業ミッションのパートーナが用意されていた。
パートナーは三栖公俊(みす・きみとし)。評議会と公安四係を渡り歩いてきた男だった。
三栖をチャーチに送り込んできたのは警察省警備局次長の志倉。
志倉は、なかなか成果を上げられないサクラに対し焦りを感じ、公安五係及びチャーチの解体を検討していた。
情に流されず完璧な正義を目指す志倉にとって、一嶋がこだわったメサイアというシステム自体に意義が感じられない。
そこで、三栖を使ってチャーチ解体の判断材料を集めていた。鋭利の事故死にも裏があると感じている。
三栖にも思惑があった。
行動を共にしてきた周が何も言わず公安を抜けた後、今の自分にできる事をやるしかないと思い、志倉に接触。評議会でも公安四係でも出来なかった事を成し遂げるために自らチャーチに入った。
死んだ時、鋭利が身につけていたメッセージがあった。
ヨハネ第9章25節
「私は盲目であったが今は見える」
このメッセージを、珀はチャーチに裏切り者がいると解釈する。
神北が北方連合と交信していたアクセス記録の発見や、鋭利と言い争いをしていたという情報により、珀は裏切り者は神北だと想定。
ノーストップ製薬で研究開発していた新種のウィルスを北方連合から守り、チャーチ内で保管していたが、そのウィルスを北方連合に渡すつもりなのだと考えた。
そして、そのウィルス移送計画が第2のミッションだと予想する。
珀の読み通り第2ミッション、「チャーチに保管されているウィルスの移送」の指令が下される。
神北からは三栖に気をつけろと忠告があり、自分以外が全て敵だと思って行動するようにと助言される。
さらに、有賀からは間宮の行動が怪しいと報告が上がる。
本当の裏切り者は誰なのか?
信じられるのは自分だけという極限の状況の中、第2ミッションが開始された。
裏切ったのは三栖だった。三栖との揉み合いの末、倒れる珀。
そこへ、死んだはずの鋭利が現れる。
珀を芹沢の手から逃れさせるために、死の偽装をしていたのだった。
“音”で気づいた間宮は知っていたが、口止めされていた。
ウィルスを持ち逃げしようとしていた三栖は、サクラに取り囲まれ勝ち目はないと悟り大人しく降伏する。
三栖は芹沢に、母親を人質に取られウィルスを手に入れるよう揺すられていた。
しかし、私的な動機で北方連合へ加担し、日本を危険にさらした事は厳罰を免れない状況だった。
そこに志倉が現れ三栖の釈放を言い渡す。
志倉は、三栖をチャーチへ送り込み、北方連合の工作員との接触や卒業ミッションの経緯の全てを把握していたと明かす。
全ての行動を監視し把握していたからこそ、あのタイミングで海堂鋭利を現場に向かわせるよう、神北に指示を出せたのだった。
珀の心の弱さを指摘し、サクラとして使い物にならないと言い放つ志倉。
神北は三栖の処罰なしにやむなく同意するが、三栖を使い芹沢と接触させ、生け捕りにする作戦を提案。
三栖と志倉も了承する。
チャーチ解体に傾く志倉に対し、神北は一嶋係長がメサイアにこだわった理由を証明するためにも、鋭利と珀の卒業ミッションを見守って欲しいと願い出る。
鋭利の死の偽装によって珀の心の弱さが露呈する中、神北より最終ミッションの指令が下る。
第3のミッションは「チャーチの中にいる人間のうち、誰か一人を殺す事」。
殺す相手は自分で考える。
一方、三栖は芹沢に接触。
生け捕りに成功していた。
鋭利と珀には、それぞれミッションの開始まで別々の独房で過ごすよう指示が出る。
そこは、鋭利にとって死の偽装中に過ごしていた独房だった。
鋭利は、国籍も戸籍も抹消され、この世からいない存在としてサクラとして生きて行く事に意味はあるのかと、ずっと考えていた。
その頃、珀の前にはチャーチを出て行く事になった三栖が現れ、芹沢の居場所と鍵を置いていく。
芹沢の元に向かう珀。
そこで自分の身代わりに兄が拉致された事実を知らされる。
珀は芹沢の話術にはまり、動揺してしまい殺す事ができない。結局、芹沢を残し、その場から離れるのだった。
チャーチ内に潜伏していた北方連合の工作員の手引きにより、我妻からのメッセージとウィルスがワクチンとセットで芹沢の元に届く。
芹沢の指示で、地下通路から招き入れられたGがチャーチ内に出現するが、卒業ミッションは続行され、チャーチ内は戦場に。
「チャーチの中にいる人間のうち、誰か一人を殺す事」というミッションに答えを出した珀。
珀は「相棒が必ず死ぬ」という自分のジンクスに決着をつけるため、もう誰も自分のために死ぬ事がないようにと、自分で自分を殺す事を決意、銃口を自分に向ける。
生きる意味が見つからないと吐露する珀に。
お互いがお互いの生きる意味として存在しようという鋭利の言葉に、心を動かされる。
「相棒が必ず死ぬ男」という珀のジンクスに、「絶対に死なない男」という鋭利のジンクスが勝った瞬間だった。
相棒が死ぬことに怯え続けていた弱い自分は死に、サクラになり、鋭利のメサイアとして生きる覚悟を決める珀。
珀と鋭利は、潜入したGにより生じた、チャーチ内の混乱に乗じて脱出しようとしていた芹沢と遭遇。
芹沢の盾にされる鋭利に対し、弱い自分を乗り越え覚悟を決めた珀は、鋭利が巻き込まれるかもしれないという不安にも迷わず銃弾を打つ。
一度は珀の銃弾に倒れたが、起き上がろうとする芹沢にトドメを刺したのは神北の銃弾だった。
第3のミッションの本当の意味は、“生きる事に怯えていた自分自身を殺すこと”であり、卒業ミッションを通じて、生きる意味を見つけた2人は、ミッションクリアとなり、チャーチを卒業するのだった。
2人の卒業ミッションを見守った志倉は、メサイアの意義を理解しサクラと共に戦う決意を固める。
そもそも志倉のチャーチ解体の意図は、サクラが他国の脅威の1番の標的となり命を落とさないようにという温情からであった。
そして三栖も、もう後戻りはできないと腹をくくり、自分の信じる道を歩き出すのだった。
『メサイア-翡翠ノ章-』用語解説
ここからは、舞台『メサイア -翡翠ノ章-』をより楽しむために、舞台中で使用されている用語について1つ1つ丁寧に解説していきます。
先にアップしてある記事と重複している部分もありますが、シリーズの進行具合に合わせて加筆修正しています。
軍事協定「ワールド・リフォーミング」
世界各国が大幅な軍縮と兵器の開発禁止に調印した軍事条約。期限は10年。 再調印の是非を問う世界会議が開催を控えている。
チャーチ
"サクラ"を育成する機密学校。チャーチではサクラ候補生として2人1組のペアを組み実践さながらのミッションに挑みながら、あらゆる技術と知識を身につける。
メサイア
メサイアとは誰からも救われることのない存在であるサクラを唯一救う事を許された存在。サクラが任務に失敗したからといって国はサクラを助けない。他のサクラも救出には向かわない。任務の失敗は死を意味する。
「任務に失敗した時は、どんな事があっても互いを救う」。
この約束を取り交わした相手を絶望的な状況から救い出してくれる「救世主」になぞらえ、 "メサイア "と呼ぶ。
互いにとって己の助けとなるメサイアの存在は、底なしの闇と死の恐怖に立ち向かいながら、生き抜くための理由であり心の拠り所でもある。
卒業試験前のメサイア同士は別室になる。
※メサイアがいなければチャーチを卒業する事は出来ない。
※メサイアがサクラを救うのは義務ではなく権利。
※チャーチに入学すると、強制的にメサイアとして2人1組のペアを組まされ寝食を共にする事になる。相手は選べない。
サクラ
国家最高機密のスパイ組織。警察省警備局特別公安五係(公安五係)に所属する、特別殺人権が与えられたスパイたちの通称。サクラは国籍や戸籍、過去の経歴も抹消されこの国から消された存在。仮に任務中に死亡しても一切の証拠を残してはならない。
通常、任務に失敗したサクラを国家が助ける事はない。サクラの如く散る、その日まで、任務をまっとうするという刹那的な生き様を、桜の花の散りゆく姿に例えて〝サクラ〟と呼ばれている。
公安四係
評議会と呼ばれるテロ組織や、北方連合の工作員からこの国を守るため、重要案件の捜査にあたる警察組織。中でも四係は最重要案件の捜査にあたる部署。四係内でも、公安五係(サクラ)の存在を知る者はほとんどいない。
北方連合
ユーラシア大陸の東側のほぼ全ての国家が参加する超大国。軍備推奨派の急先鋒。世界最後の独裁国家と呼ばれている。整形技術が発達していて、機関員たちも顔を変えることに抵抗が少ない。秘密裏に再軍備を準備していて、北米連合との交渉材料としてウィルスを狙っている。
評議会
反政府革命組織のテロリスト集団。軍縮による国力の低下を憂い、強い日本を取り戻す事が目的。しかし、内部分裂が表面化。北方連合と同盟関係だったが、堤 貴也の裏切りにより崩壊。
ノーストップ製薬研究所
細菌やウィルスの研究施設。新型ウィルスの培養を行なっていた。ウィルスを巡って北方連合と銃撃戦になり、無事ウィルスを守る事に成功した。
G
薬物で精神を破壊された人間。北方連合が開発した、痛覚を消し去り治癒力を高め人間をゾンビ化させる薬の名称“GRACE”の頭文字をとって“G”と呼ばれている。
『メサイア-翡翠ノ章-』重要人物解説
神北竜二(かみきた・りゅうじ)
一嶋のメサイア。チャーチの学園長兼係長代理。一嶋不在時に係長代理を務める。鋭利と珀にはサクラとして決定的に足りないものがあると指摘している。
海棠鋭利(かいどう・えいり)
今作でチャーチを卒業。
射撃の名手で「絶対に死なない」というジンクスを持っている。両親と妹を幼い頃に亡くし、コリアンマフィア育てられた。鉄砲玉として銃弾を浴びるが一命を取り留める。一嶋にスカウトされチャーチに入学。
御津見 珀(みつみ・はく)
メサイア:海棠鋭利
過去に2人のメサイアを亡くし留年していたが、今作でチャーチを卒業。
人並み外れた記憶力の持ち主で変装も得意。甘いものが好きで部屋は常にお菓子で溢れている。特に新作や季節限定品に目がない。ナニーという乳酸菌飲料を持ち歩いている。「必ずメサイアが死ぬ」というジンクスを持っている。
白崎 護(しらさき・まもる)
メサイア:悠里淮斗
新人サクラ候補生。
元公安四係のエース。幼い頃に家族を亡くし、孤児院で育つ。そこで悠里淮斗と出会い親友に。引きこもりの淮斗の面倒を見ながら、公安の激務をこなしていたが、要人警護の任務で刑務官殺しの容疑をかけられてしまう。神北にスカウトされチャーチに入学。
悠里淮斗(ゆうり・かいと)
メサイア:白崎 護
新人サクラ候補生。
“フリューリング”として活動していた、凄腕ハッカー。同居している白崎 護とは孤児院で出会い親友に。弟の事故死により引きこもりに。護を助けたい一心で、自らの殻を破り現実と向き合う。神北にスカウトされ護と共にチャーチへ入学。
間宮星廉(まみや・せいれん)
メサイア:有賀 涼
新人サクラ候補生。
元ヴァイオリニストで、耳が非常に良い。
有賀 涼(ありが・りょう)
メサイア:間宮星廉
新人サクラ候補生。
元暗殺組織・第三の闇に所属。党首に育てられるが、自らの手で組織を壊滅。その後、一嶋にスカウトされチャーチに入学。ドライな性格。
三栖公俊(みす・きみとし)
元評議会の幹部。貧しい家に育ち、幼い頃に母親が一家心中を図るが一人生き残る。組織から排除されそうになった周をかばい、評議会を裏切り周と組織を抜ける。公安にスカウトされ四係に配属される。周がいなくなった後、己の信念に従くべく警察省の志倉と接触し、チャーチに送り込まれる。母親が生きているという情報を掴むが、母親を人質に取られ芹沢に利用される。究極の平等を目指す。
芹沢(せりざわ)/御津見 琮(みつみ・そう)
行方不明だった、珀の兄。北方連合工作員で我妻の部下。戦闘、狙撃、潜入どれも一級の腕を持つ。様々な手段を使って人の心を奪い操る事ができる。一種の催眠術の使い手。サクラの壊滅を目論む。
我妻 鉱太郎(あがつま・こうたろう)
警察省官房室のキャリアで公安部の元部長。サクラ創設にも関わるが、今は北方連合に所属。日本に誇りと自信を取り戻させることを目的に、新たな組織を作ろうとしている。
志倉一仁(しくら・かずひと)
警察省警備局次長。我妻とは元同僚。サクラ創設当初に期待していた理想からかけ離れてしまい、焦っている。情に流されず、完璧な正義を目指す。サクラを試すため三栖を五係に送り込む。チャーチの解体を検討している。
舞台『メサイア-翡翠ノ章-』公演概要
公演日
東京公演:2015年5月13日〜24日
場所:サンシャイン劇場
神戸公演:2015年5月30日〜31日
場所:新神戸オリエンタル劇場
脚本:毛利亘宏(少年社中)
演出:西森英行(Innocent Sphere)
殺陣:六本木康弘
製作:CLIE
舞台『メサイア-翡翠ノ章-』DVD